顔彩・水彩イラスト メイキングNo.1|「無響」

月代涙です。

顔彩で描いた絵のメイキング記事です。

iPadを用いた下図制作から顔彩での着彩までの工程を紹介します。

ラフ起こし~下図制作(デジタル)

ラフ起こし~下図作りはデジタルで行います。使用ツールはiPad proとApple pencil、お絵かきアプリはprocreateです。

今回は暗闇のなかに気配なく佇む幽霊・怪異のような少年を描きます。羽ムシャムシャ(食べているわけではない)

完成したらブログのトップ画像や名刺用にも使いたいため、縦長構図でありつつ顔回りで横向きにトリミングしてもいい感じになるよう、顔回りの羽のバランス・ボリュームを意識しました。

実はこのラフ自体は昨年2022年の8月に起こしたもの。当時はこんな感じ↓

1年越しに改めて確認したら割合単調に感じられたため羽と木瓜の花を描き加えました。少年の顔もなんだかノッペリしていたので若干修正しました。服も着せたよ

私の絵は常々、線画段階と比較して完成時の画面の情報量に欠けることが課題。

なので今回は下書きに時間をたっぷり使い、思考と実践的な描き込みを怠らないよう気を付けました。

水張りパネルの準備

本画は水彩と顔彩で描くため、支持体を木製パネルに水張りします。

今回使用した紙は土佐麻紙と呼ばれる和紙です。

厚地で耐久性が高く、重ね塗りに適しています。

水彩紙は凹凸がある面が表面なのでそのノリで水張りしたのですが、土佐麻紙の場合は逆……ザラザラしていないほうが表らしいことを後から知りました。

え~~い知るか!今回はそのまま塗り進めます。

弘法筆を選ばずとは言うけれど、紙(支持体)はこだわると良いかもしれない一生懸命塗ったのに何か仕上がりがしっくりこない。なぜか理想の塗りにほど遠い。このような場合には、紙(支持体)を見直すとよいのかもしれませ...

下図の転写

パネル張りした麻紙が乾いたら、デジタルで起こした下図を転写します。

カーボン紙がなかったので、4Bの鉛筆で下図の裏を真っ黒にするという大変原始的な方法で転写しました。

このままではどれがどの線か判別が難しそう。無心で補強します。

おそらく紙の裏表が逆なせいだと思いますが、めっちゃ繊維が出てくる出てくる……決して絵描き歴が短いわけでもないのに、いつまで経っても初心者。

線画(骨描き)

転写した線を手掛かりに骨描き(こつがき)をします。

細長い面相筆にナカガワ胡粉絵具株式会社さんの骨描き墨汁をたっぷりつけて、できるかぎり強弱の少ない均一な太さの線を描写します。ついつい息が止まります。水泳部並みの肺活量がある。そんな自信がある。

骨描き

着彩前に墨で輪郭線をなぞること。ペン入れの墨バージョン。

強弱のない一定の太さの線で描写される線を「鉄線描」と呼ぶらしい。


できました。線画 精神統一 [検索]

下塗り

いよいよ色塗りの時間です!!

ベースは顔彩の利休鼠、亜麻色、銀鼠(たぶん)をたっぷりの水分で置きます。

紙本来の色が見えなくなるくらい厚く塗り込んだら、乾いていない状態で赤系の色を追加します。

瞳には赤色、背景と服と髪に青銅色を置きました。画面に締まりが出てきましたね。

塗り進めるうちにキャラクターやモチーフが浮かび上がってくる感じが好きです。

背景と髪は最終的に黒色にする予定ですが、ベースに有彩色を置くことで深みが出ます。

すっかり埋もれてしまった線画を顔彩で補強。同時に羽の束感を塗り込み、一段落ついた下塗りがこちらです↓

こんな感じで、いつも下塗りにたっぷり時間をかけています。

顔彩は透明水彩と異なり不透明な色が多く、マットな質感に仕上がります。

それに加え、色のラインナップがもともと渋い雰囲気なので、重ね塗りによるくすみ・濁りと相性がよいです(透明水彩は重ねれば重ねるほど透明水彩の良さを打ち消すように濁ってしまうので、サラサラ塗り向けかも)。

そのため私のように「こってり塗りたい!」と思っている人には顔彩がおすすめかも~

塗り込み

いよいよ塗り込みの工程に入りました。

この工程では、主にモチーフの固有色を置く作業をします。

本作は背景と少年の色数を絞り、手前の羽と木瓜の色彩を強調するつもりなので、髪も背景もどんどん黒く濃くします。後ろの半円は全体の情報量を見つつ、箔押しか銀の水干絵具を塗るか、絵具で月の模様を塗り込むか何れかの予定。

吉祥顔彩24色セットの浅葱色、百群色、群青色を召喚!! ドン!!

羽は単調に塗るのではなく、重なり合っている部分に銀鼠色を置いたり胡粉を置いたりしてコントラストを出します。

木瓜の花にも赤を置き、全体の色味を見つつ慎重に慎重に……


塗れました。

すかさず黒色と水干絵具の銀と銀鼠で羽を塗り込みます。

羽を塗ったら少年の印象が薄くなってしまったので、髪色を更に濃く、瞳の塗り込みも増やしました。

同時に背景も黒でシメます。

下半分も同じように塗り進めます。

羽の濃淡が理想通りになるまで、黒と青を何度も何度も塗り重ねると同時に、木瓜に銀鼠で塗りのあたりをつけた後、紅梅色と紫で塗り込みます。上の画像は木瓜に銀鼠を置いたところです。

先述の通り、私は自分の絵の「塗り込んだ後に情報量が少なく見えてしまう」ことが課題に感じています。色々なイラストや日本画、西洋画を比較して見てみて、それの原因の一つに主線の薄さがあるのではないかと仮定しました。

確かに、私は水彩を始めて以降、色に対して主線が浮いて見えることに悩んでいた時期が長くありました。その影響で線画を意識的に細く(あるいは薄く)することにこだわり始めてから、より一層情報量の少なさが目立つようになった気がするのです(濃い主線はそれだけで画面にコントラスト差を与えるのでインパクトがあります)


もうほぼ完成だね!

情報量を増やすという使命感に駆られたので後ろの半円は絵具で月を表現することに。

完成

人物やモチーフの輪郭線を強調し、最後に銀鼠で弱めのハイライトを入れ完成させたのがこちら

Twitter(X)にも投稿しました。でもスキャンしたらかな~~~り色が飛びましたエーン

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